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投資家の利益を最大化する「フィデューシャリー・デューティー」

Fiduciary duty
(写真=Rido/Shutterstock.com)

金融機関の関係者を除いて「フィデューシャリー・デューティー」という言葉には馴染みがないかもしれません。fiduciary(フィデューシャリー)は「受託者」、duty(デューティー)は「責任」で、端的に言うと「資産を預かり運用する側は、資産を預けた人の利益を最大化する努力義務があり、その利益に反するような行動をとってはならない」ということです。

この言葉が昨今、にわかに注目を集めている理由を探ってみました。

政府がフィデューシャリー・デューティーの取り組みを促進

「フィデューシャリー・デューティー」という言葉が知られるきっかけとなったのは2014年9月に金融庁が公表した「平成26事務年度金融モニタリング基本方針」です。金融機関に対して「商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関がその役割・責任(フィデューシャリー・デューティー)を実際に果たすことが求められる」と言及しました。

さらに翌年2015年には「平成27事務年度金融行政方針」で「投資信託・貯蓄性保険商品等の商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関等が、真に顧客のために行動しているかを検証するとともに、この分野における民間の自主的な取組みを支援することで、フィデューシャリー・デューティーの徹底を図る」と表記しています。

続いて2016年6月に発表された「日本再興戦略2016」では「金融商品の販売・開発に携わる機関に対しては、顧客(家計)利益を第一に考えた行動がとられるよう、また、家計や年金等の機関投資家の資産運用・管理を受託する金融機関に対しては、利益相反の適切な管理や運用高度化等を通じ真に顧客・受益者の利益にかなう業務運営がなされるよう、フィデューシャリー・デューティーの徹底を図ることとし、これにより、国民の安定的な資産形成への貢献を促す」と、より具体的な記述で念押した格好です。

金融機関と投資家間で行われている利益相反取引を問題視

加えて2016年10月発表の「平成28事務年度金融行政方針」では「国民の安定的な資産形成を実現する資金の流れへの転換」の項で金融機関に対して「手数料稼ぎを目的とした顧客不在の金融商品販売」「商品・サービスの手数料水準やリスクの所在が顧客に分かりにくい」と明確に課題を提示し、対策を要求しました。

ここまでしつこく行政側が指摘するのには、日本の金融機関でフィデューシャリー・デューティーが徹底されてこなかった現実があるからです。収益が上がった投資信託を期限前に解約させ、別の投信に乗り換えさせる回転売買の横行もそのひとつで、手数料収入を目的とした営業姿勢が問題視されています。

欧米では投資信託の運用会社と販売会社の間にしがらみがない「製販分離」が浸透していますが、日本では同一グループ傘下の運用会社が設定した投資信託を銀行や証券会社が積極的に販売し、グループ内に利益を落としていくというスタイルが公然と行われてきました。必ずしも投資家の利益を優先しているとは言えない取引が問題視されながらも、続けられてきた現実があります。

金融機関のフィデューシャリー・デューティー取り組み方針をチェック

金融機関側もたびたびの指摘を受け、是正に向けて積極的に動き始めています。2015年8月にいち早く「フィデューシャリー・デューティー宣言」でアクションプランを策定したのが三井住友アセットマネジメントです。「資産運用の世界において、従来は当たり前と思っていた業務慣行を改め、お客さまの視点で業務をゼロベースで見直します」との決意表明が印象的です。

現在では多くの金融機関がフィデューシャリー・デューティーに関する取り組みをHPなどで公開しています。2018年1月からスタートする「積立NISA」制度の枠組み策定にあたっても、金融庁はフィデューシャリー・デューティーの姿勢を鮮明に打ち出してきました。

投資可能な商品は公募株式投資信託とETF(上場投資信託)に限定し、投資家が負担する販売手数料、信託報酬額にも制限を設けています。フィデューシャリー・デューティーの遵守と利益のバランスを今後どう取っていくのか。日本の金融機関は、正念場を迎えています。

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