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マンションオーナーが知っておきたい「民事信託」

(写真=Sean Pavone/Shutterstock.com)

いま、「民事信託」という仕組みが注目を集めています。信託と聞くと、「それって投資信託と同じようなもの?」と考えてしまいそうですが、こちらは投資とは無関係。個人の財産について信頼できる人に託し、特定の相手に確実に受け継いでもらえるよう、管理・処分を任せるというのが、そのおおよその中身です。

ますます高齢化社会が進み、認知症に罹る不安も増していくなか、民事信託を使えば自分が元気でしっかりしているうちに、財産の行き先を定めておくことが可能です。特に財産のなかでも不動産の割合が高いような場合、より有効と言われる民事信託。その仕組みをチェックしてみましょう。

民事信託が注目されるワケ

「そもそも信託って何?」ということに関しては、法律的には、「信託法」によって定められています。

信託法に定められている「信託」とは簡単に言うと、「財産を持っている人(委託者)が、財産の全部もしくは一部(信託財産)について、その権利を信頼できる特定の人(受託者)に渡し、委託者の指定した人(受益者)の利益になるように管理・処分してもらうようにすること」ということになります。また、こうした取り決めを行うことを「信託行為」と呼びます。

この信託には、大きく分けて「営業信託」と「民事信託」の2種類があります。営業信託(商事信託)は、信託業の免許を受けた業者(信託会社)が受託者となり、事業として信託を請け負うもの。金融商品としての投資信託、土地活用を任せる土地信託などはこれにあたります。業者は、財産の管理を行うことで、一定の報酬(信託報酬)を得るわけです。

それ以外の、営利を伴わない、いわば“私的な”信託が民事信託で、家族信託や非営業信託とも呼ばれます。事業ではないため国が定める免許も必要なく、個人でも法人でも受託者になることができます。

もともと日本では信託と言えば商事信託が中心であり、1922年(大正11年)に制定された信託法(旧信託法)も、それを主に想定したものでした。しかし、それから80年以上経って、2007年(平成19年)、多様な信託利用形態に合わせた自由度の高い新たな信託法が施行され、非営利目的の民事信託に関しても、容易に設定・利用できるようになったのです。民事信託が近年、にわかに注目を集めるようになった理由もそこにあります。

民事信託は、どんな場合に有効?

民事信託のメリットとしては、それぞれの事情に応じて信託契約を設定できる点が上げられます。高齢化社会の進展でますます高まりつつある認知症のリスクへの備えとしては、これまでにも、遺言や成年後見制度などが利用されてきました。

例えば遺言は、相続先やその方法を指定するには最も一般的で認知度も高い方法ですが、あくまで財産を持っている本人一人の一方的な意思表示に過ぎないこと、周囲の意見・説得などによる「書き換え合戦」で、どれが最終・決定的な遺言かでもめる危険性があることなどのデメリットもあります。

また、成年後見制度は判断能力が衰えて財産が侵害されたりすることがないよう、家庭裁判所にゆだねて後見人を選任してもらう仕組み。しかし「財産を守る」という点では確実性が高いものの、活用という点では不自由があり、家族の意向も反映されづらいという難点があります。

その点、民事信託の場合は、かなり自由度の高い設定が可能です。取り決めに含めておけば、家族のために利用することなどもでき、子どもの代だけでなく二代、三代先までの財産の継承先を決められます。特に後者は、従来の遺言ではできなかった機能です。

また、財産の受益者は複数指定できますが、管理や処分を受け持つのは受託者一人。例えば「何人かで不動産を相続して、共有状態になっている」といった場合、通常は全員の合意がなければ処分できず、いざというとき処分も利用もできないなどの事態が起こり得ますが、信託ならば、受託者の判断で処分し、その利益を分配することができます。「マンションやアパートなどの相続には、民事信託が便利」と言われる理由もそこにあります。

まだまだ一般に馴染みが薄い民事信託ですが、使い方次第では、これまでよりもずっと、財産を持っている本人の意思に沿うかたちで、それを与えたい人の利益になるように遺すことができます。「どうやって遺そうか」と考えている方、一度検討してみてはいかがでしょうか。

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