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アメリカで増えている自社株買い 株価バブルが起きる危険性はある?

(写真=iamPOJ/Shutterstock.com)

「自社株買い」と聞くと、日本では概ねポジティブに捉えられるのではないでしょうか。しかし、自社株買いにはポジティブな面ばかりではなく、ネガティブな要素も含まれています。アメリカでは「自社株買い」に批判的な見方もあるようです。そこでこの機会に、「自社株買い」に関する基礎知識を整理しておきましょう。

「自社株買い」の目的とは?

「自社株買い」とは、上場企業が市場から自社の株を買い戻すことを言います。買い戻された株式は会社が保有し、再度売り出すこともできますし、消却することもできます。

現在の「自社株買い」の目的は「株主還元」とされています。つまり、市場に流通する自社株を自らが買い取ることで、流通株数を減らして「需要と供給」を改善し、株価を支えます。さらには「株価が下がってきても自社株買いが入る」という安心感も出ます。そして、発行済株式総数を減らすことで1株当たり利益(EPS)が向上し、株価上昇に繋がりやすくなることから、既存株主には概ねポジティブなことだと考えられています。

日本でも、近年重視され始めている指標「ROE(リターン・オン・エクイティ=自己資本利益率:株主資本に対する利益の大きさを測る指標)」の改善にも繋がるため、証券アナリストや投資家の評価に繋がりやすくなると言われています。ROE向上を目的に、自己資本を切り崩して「自社株買い」を行い、足りなくなった事業資金を借金で賄う企業もあるそうです。

「自社株買い」の問題点

この一方で、自社株買いにはいくつかの問題点が指摘されています。その内容は「長期的に株主の利益を毀損する恐れがある」というものですが、論点をいくつか挙げてみましょう。

1. 「自社株買い」の資金は設備投資に振り向けるべきではないか?

企業が資金調達するには、大きく分けて株式による「エクイティ・ファイナンス」と借金による「デット・ファイナンス」の2種類がありますが、どちらが優れているとは一概には言えません。

しかし、リスクを好まない銀行の理解を得にくいような抜本的で大規模な経営改革を行うとしたら、やはり頼りになるのは内部留保資金です。それであれば、その資金は目先の「自社株買い」に使うのではなく、将来の設備投資に使うべきであるという考え方があります。

2. 「自社株買い」の資金は従業員還元に使うべきではないか?

2017年12月にアメリカでは法人税減税の法案が成立。これを受けて通信大手のAT&Tは米国内の従業員20万人以上に1,000ドルのボーナスを支給する方針を明らかにしました。そして、減税の恩恵を従業員に還元する企業が増えて、個人消費が活発になることが期待されました。

しかし、2018年の2月7日には上院の民主党議員から「法人減税で受けた恩恵を社員ではなく株主に回している」との報告書が提出されるなど、実際には減税で浮いた資金が従業員には回っていないようです。株主還元(「自社株買い」や配当)に偏重するようであれば、政治的にも問題になりそうですが、従業員のモチベーションダウンや離職による採用コストの増加など、企業価値にマイナスに働く可能性があります。

3. 経営者が自分の報酬アップのために濫用しているのではないか?

日本においては、かつて「使う予定のない内部留保は積極的に株主に還元すべきだ」という議論が行われたことがありました。アメリカにおいては「アクティビスト」と呼ばれる「物言う株主」が「自社株買い」や増配を求める動きは早くから始まっており、経営陣も大量の株式を保有する「アクティビスト」の声に耳を傾けざるを得なくなっています。

この交渉の中で「アクティビスト」と経営者の双方のメリットになると言われているのが「自社株買い」です。アメリカではCEO(最高経営責任者)など経営幹部に対してストックオプション(株式を一定金額で会社から買取り、市場で売却して利益を得る権利)が付与されているケースが多く、「自社株買い」を行うことで、アクティビストへの対応と自己の報酬アップを両立させることができます。この結果、目先の株価にとらわれ、長期的な企業価値を毀損しているのではないかと指摘されています。

自社株買いは株価バブルの原因となるか?

上記のように問題点も含んでいる「自社株買い」ですが、今後どのように考えていけば良いのでしょうか?

まず、株価上昇の本質は「事業が顧客に支持され、経営努力でコストを抑え、利益を向上させつつ、将来期待を抱かせる成長ストーリーを描き、投資家の人気を高めながら株価が上昇していく」というのが基本です。これに対して、「自社株買い」による株価上昇は、業績とは関係なく資本テクニックによって株価に働きかける手段とも言えます。

その一方で、企業が「将来への備え」と主張しても、余剰資金を貯めこんでおくのは株主利益や経済全体へのマイナス面が大きく、「アクティビスト」の主張にも理があります。そして、余剰資金についてあまりに無頓着であるならば、経営者の責任が問われることになるでしょう。

「自社株買い」は長期的に投資家にメリットをもたらしますが、目先の株主対策や自己の報酬のために行う「自社株買い」には警戒が必要かもしれません。

自社株買いはポジティブな面、ネガティブな面の両方をみておくこと

日々の株価を見る上では「自社株買いはポジティブ」と捉えておいてもかまいません。一方で、企業価値と株価がかけ離れる「自社株買いバブル」への懸念も忘れてはなりません。「自社株買い」にはポジティブな面とネガティブな面の2つの顔があるのです。自分の保有する銘柄で、いざ「自社株買い」が始まったその時にどのように考えるべきなのか、あらかじめ確認しておいたほうが良さそうです。

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