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今、思い出したい「アジア通貨危機」

(画像=PIXTA)

2018年夏、日本国内は酷暑と豪雨の水害に打撃を受けましたが、国外へ目を向けると為替市場、とりわけ新興国通貨の下落による波紋が広がりました。アメリカの経済政策に大きく左右される新興国通貨の現状は、あたかも21年前のアジア通貨危機を彷彿させるという見方もあります。

当時ほどの影響はないという分析もありますが、先行きの不透明感を払しょくできない現在、あらためて1997年のアジア通貨危機についておさらいし、備えておくべき対策について考えてみます。

大揺れの世界経済、新興国の通貨下落と政策金利の高騰

2018年の世界経済は新興国の不安定な動きから目が離せない状況が続いていますが、そのほとんどが対アメリカの長期金利上昇に伴うものと考えられています。特に、トルコリラはシリア情勢が緊迫した3月から下落が始まり、中央銀行による利上げも不十分と判断され下落を止める材料にはならず、6月の大統領選で再選されたエルドアン大統領の金融介入発言によってさらに下落が進みました。そして、8月に入ると拘束していたアメリカ人牧師の解放問題が大きく取り沙汰され、世界経済を揺るがしかねない暴落ともいえる通貨下落に見舞われたのは記憶に新しいところです。

トルコリラの暴落にかすんでしまいがちですが、ロシアルーブルも4月の段階で約10%の下落、8月にはイギリスでの元スパイ襲撃事件はロシアに責任があるとアメリカが断定し、経済制裁を発表するとルーブルは急落、さらに10%近いドル高が進みました。また、アルゼンチンに至っては4~5月にかけて8日間で3回もの利上げに加え、IMFから500億ドルの経済支援を受けたにもかからず、8月13日には政策金利を45%へさらに引き上げるという日本では想像もつかない展開となっています。

世界各地で大揺れしている現状は、低金利を嫌気してアメリカ国外で運用されていた資金が、金利上昇によってアメリカ国内へ戻っていることが原因として考えられます。このようにアメリカの金利政策によって世界経済に大きな打撃を与えた代表的な事例として、思い起こされるのは1997年の「アジア通貨危機」です。

あらためて1997年「アジア通貨危機」を振り返る

1997年、タイバーツの暴落によって次々とアジア諸国に連鎖した「アジア通貨危機」をここで一度振り返ってみましょう。

タイを含む東南アジア諸国は、1980年代から急激な経済成長を遂げるとともに投資先としても大変注目される地域でした。当時、バーツはドルに対して固定相場制(ドルペッグ制)を採っていましたが、折からのアメリカ経済回復と金利上昇によってアメリカへ資本が集まり始め、市場はドル高へと急速に舵が切られます。タイバーツもこれに合わせて上昇、国内経済はバブル化し海外から進出していた企業は次なる市場を求めて中国へと移っていきました。

タイはドルペッグ制を維持するためにドル売りバーツ買いを強行しましたが、外貨が底をついたこととヘッジファンドによる空売りを阻止することができず、変動相場制へ移行を余儀なくされたのが1997年7月2日のことでした。

1日のうちに20%弱も暴落したバーツの影響は、インドネシアやマレーシア、韓国、ロシアへ波及し、アジア全体に深刻な景気後退を引き起こしたのです。

日本は、このタイバーツによる通貨危機がきっかけとなり、大手銀行が行なっていたアジア向けの融資が焦げつき、山一證券や北海道拓殖銀行などの相次ぐ破たんが起こり、経済の大混乱とそれから先に続いた「失われた20年」へと突入しました。

現在の新興国の通貨下落は、新たな通貨危機への序章となるのか

現状の新興国における通貨下落は、過去のケースと同様、アメリカの金利上昇によって生じているものである限り、通貨危機のリスクはゼロではないといえるでしょう。さらには、南アフリカが第二のトルコになり得ると世界の投資家が見ているとする声も出ています。

何が引き金になるにしろ、21年前のような大混乱を避けられるかどうかは、個人投資家にはなかなか力及ばぬところではありますが、利回りを優先しすぎず、通貨下落のリスクヘッジを考慮するなど自己防衛策を取ることはできるでしょう。

とはいえ、今回のトルコリラ暴落が1997年ほどの大きな危機になることはないと分析する向きもあるようですので、あまり悲観的になりすぎず、国内外のマーケットの動きに注目しておく時期なのかもしれません。